「柔らかく膝」を使うと、ランニングにおける3つの痛みが軽減される

次に、楽に早く走るための「膝関節」の使いかたについて解説します。膝関節は「柔らかく使う」ことを意識しましょう。

「膝関節を柔らかくとはどういうこと?」と思われるかもしれません。しかし、走る際に最も負担がかかる脚に注目しなければいけません。その中で、「膝」に注目することは非常に大切です。

本記事では、「膝を柔らかく使うとは、どういうことか」「膝を柔らかく使うには具体的に何をすべきか」について解説していきます。この内容がわかると、走っている最中に

・脚の各部(足裏、足指、膝)が痛くなる
・腹部、心臓部が痛くなる
・疲労度が軽減される

といったランニング初心者に起こる「体の痛み」を大幅に軽減できます。

人は何もしなくても、骨盤が前に傾くようにできている

「膝を柔らかく使う」方法を解説する前に、「人は無意識に膝関節周りの筋肉を使っている」ことを立ち姿勢にて解説します。

人は何もしなくても「ふくらはぎ」と「太ももの付け根(腸腰筋:ちょうようきん)」の筋肉を使います。これを別名「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」とも言います。抗重力筋の関係がよく分かれば、「最も膝に負担のかからない姿勢」についてよくわかります。

まず、「ふくらはぎになぜ力が入ってしまうか」について、人の関節の構造を考えていきます。すると、「足首とすねの骨だけを見ると、人は前に倒れやすい」ことがわかります。

例えば、足関節だけに注目してみます。もしも、足関節を中心と考えて、足首とすねの骨(下腿(かたい)ともいう)を見ると、すねの骨は前に傾いています。このように、関節の中心と二つの骨の位置関係から、どのように関節が動くのかを物理的に考えることを「関節モーメント」といいます。

関節モーメントといわれると少し難しいかもしれません。しかし、ここでは「重力によって、どの関節がどのように動くのか?」と考えればよいです。したがって、重力を考えると、下腿は前に倒れてしまいます。これを防ぐために、後ろ側についているふくらはぎの筋肉を使います。そのため、ふくらはぎの筋肉は何もしなくても収縮し、力が入ります。

次に、太もも骨と骨盤から考えてみます。これも結論から言うと、「太ももと骨盤の二ヶ所だけみると、人は後ろに倒れやすい」ことがわかります。横からみると股関節の位置が太ももの骨より後ろにあります。従って、体が後ろに倒れるのを防ぐために、下腹の筋肉が張ります。

最後に股関節と背中の二つの部位に注目します。「股関節と背中を見ると、人は前に倒れやすい」ことがわかります。横から見て、背骨が股関節の位置より前にあるからです。体が前に倒れるのを防ぐために、背中の筋肉が張ります。

以上の内容をまとめると、人は何もしなくてもふくらはぎ、下腹、背中の筋肉が張りやすいことがわかります。この三つの筋肉を張った姿勢をつくってください。おそらく、「反り腰で出尻で鳩胸」の姿勢になるのがわかります。人の体は、関節と重力の関係から、骨盤が前に傾きやすいことがわかります。

さらに、ランニングにおいては上体を前に倒すことでスムーズに重心移動を起こそうとします。すると、より上半身は前に倒れることで、骨盤が前傾します。つまり、たいていの人は走っているときに自分が意識している以上に骨盤が前に傾いていると考えられます。

3つの筋肉が張り続けると、膝に強い負担がかかる

上記した内容がわかると、膝に大きく負担がかかるのがわかります。なぜなら、三つの筋肉が硬くなると、走っている最中に膝が曲がり、腰の位置が下がるからです。

三つの筋肉を張った「前傾姿勢」をとります。すると、着地したときに膝がバネとなってジャンプするように下半身が動き、腰が上方に動きます。一方、骨盤をあえて前ではなく後ろに傾けるように「立てた」とします。すると、走っている最中に膝が曲がりすぎないために、常に腰の位置が高い位置にキープできます。そのため、腰の上下動が少なくなります。

このように、前傾姿勢をとると膝が曲がるため、着地したときに膝が伸びる分負担がかかります。膝を「曲げる」→「伸ばす」の運動量が多く積み重なるため、続けていくと膝の怪我を起こす可能性があります。

さらにこの走り方は、腰の上下動が大きくなります。これによって、腹部の内臓筋が上下に大きく揺らせるために、内蔵器官にも負担がかかります。このため、「腹が痛くなる」といった症状にも悩まされます。

この姿勢で走り続けると、「膝の曲げ伸ばし運動の量が増える」「腰の上下動が増える」だけでなく、「頭部の位置も上下に動きやすく」なるのがわかります。これを防ぐために、頭部の後ろの後頭下筋が張り、頭部が動きすぎないようにします。

首の後ろの筋肉が張ると、ランニング中に頭部に流れる血液量や酸素量が低下します。したがって、疲労感が増大し、ランニングペースが落ちます。

大阪大学の脳科学者の梶本修美氏は、「脳が疲れると身体全体が疲れる」と解説もしています(「すべての疲労は脳が原因 集英社」より)。脳の中に疲労物質(ファティーグファクター)が蓄積されると、身体全体を動かす仕事量や能率が低下すると説明されます。脳内に疲労物質がたまる理由は、仕事やスポーツで後頭部付近にある交感神経(緊張状態の際に働く神経)が活性化され、エネルギーを消費するからです。

そうして、首の筋肉を張り続けると、脳内の疲労物質はたまりやすいです。際ほどお話した交感神経は首の後ろが縮むと、過緊張状態になるからです。そのため、その状態で走り続けると、通常よりも早く疲れやすくなります。

そのため、楽に早く走るためには膝関節をうまく活用する必要があります。膝の曲げ伸ばしの運動量が軽減されると、重心移動が楽に行われ、脚に力を入れずとも早く走ることがことができます。

柔らかく膝を使う具体的な方法

では、膝を柔らかく使うための具体的な方法のについて解説していきます。以下のように意識すると、走りやすくなります。

・走る最中は、上体を前に倒すのではなく、少し起こすようにする

・膝を軽く伸ばすようにして、腰の位置を高く意識する

・着地の位置はつま先が腹の真下にくるようにし、着地した脚が体より前に行かないように意識する

以上のように意識すると、走りやすくなります。

少し起こすようにすると、骨盤の前傾が抑えられ、背筋の張りが少なくなります。これによって、これによって、膝が自然と伸びやすくなり、過度に曲がりすぎた状態を防ぐことができます。

次に、軽く膝を伸ばすようにしてください。膝を伸ばす意識を持つと、着地のときに足裏にかかる荷重が少なくなります。これにより、重心移動をスムーズに行いやすくなります。

最後に、足の着地位置です。骨盤を立てた状態で、足の着地位置を体により近づけてみましょう。膝が軽く伸びた状態が維持されて、重心移動が行いやすくなります。これによって、膝の曲げ伸ばしにより上下動が軽減されるため、

ランニング中の足の着地には,かかと着地とつま先着地があります。

ケガを軽減したければ「かかと着地」、スピードを重視したいなら「つまさき着地」
着地に関しての研究は多く行われており、目的によって、

そこで、トップランナーの着地をスローカメラで観察し、最もよい着地について研究されています。しかし、実際のところどの着地が良いのかというのははっきりと決まっていません。

かつて、かかとに力を入れた方が体は前に動くため、物理的にかかとで着地した方が良いといわれていた時期もあります。一方、現在はトップランナーがつま先で着しているため、つま先着地が良いといわれています。

しかし、姿勢の観点から考えると、両方の着地ともに姿勢が崩れる可能性をもっています。

ここでは、それぞれの着地で起こる姿勢の崩れを説明していきます。さらに、姿勢が最も崩れにくい着地の位置を解説していきます。

かかと着地、つま先着地によっておこる姿勢の崩れ
かかと着地は物理的には体が前に進むため、走るときには適しているといわれています。

しかし、この着地で走っていると上半身の重みが下半身の後部にかかりすぎてしまいます。そのため、お尻が下がり、スピードが遅くなります。また、この姿勢で走っていると、みぞおち部が曲がりやすくなります。すると、いくら前に進みやすい体の使い方をしてもスピードが出ない状態になります。

一方、つま先着地を繰り返すと上半身の重心は前に傾き、スピードが出やすくなります。しかし、この着地で走っていると親指に力がかかりすぎてしまいます。

親指に力がかかると、自然と蹴るような走り方になります。ける走り方によってスピードは出ますが、上下運動が激しくなり、着地のたびにかかる衝撃が大きくなります。

全体の姿勢は崩れていませんが、中の筋肉に負荷がかかりすぎてしまいます。すると、あらゆる脚のケガにつながるおそれがあります。

そのため、かかと着地やつま先着地にはそれぞれ悪い影響があります。姿勢が崩れず、かつ筋肉に負担のない着地の位置を考えなければいけません。

良い姿勢を維持するため、つちふまず着地を意識する
良い姿勢でかつ筋肉の負担のかからない着地の位置は、かかとではなく、つまさきでもありません。その真ん中にあるつちふまずです。ここで、つちふまずに自然と着地できる走り方を説明していきます。

まず、首を10センチ上に持ち上げるようにして、上に伸ばしてください。それから、両肩を落としてください。そうすると、足裏全体がくっつくようになります。どこにもかたよらないように足裏を地面につけます。弓の世界では、これを「墨がねを打つ」といいます。

首が伸びていなかったり、肩が落ちていなかったりすると、足裏全体にかかる圧力は一部分に片寄ります。つま先、かかと、内、外側など、どこかにかたよってはいけません。そこで、上半身の力みをなくして、足裏全体を地面に吸着させるように意識してください。

その姿勢で首を伸ばしながら上半身を前に倒れるように出してください。体が前に出ると、自然と足がついて出ます。このとき足首をなるべく曲げないよう意識して出してください。
 
そうすると、自然と足がつちふまず付近から地面に接地します。これが、つちふまず着地です。

弓の世界では入場口から射場に入るとき、姿勢を崩さないように歩くことが重要です。そのため、足裏全体が地面に着くように立ち、つちふまず付近に体重を置きながら、すり足を意識して歩きます。

着地を意識して走ると上半身の姿勢は崩れにくく、かつスピードも出やすくなります。ちなみに、首が伸びずに曲がっているとかかと着地になりやすいです。走っているときに両肩が落ちていなかければ、つま先着地になりやすいです。

首を伸ばし、肩を落とし、つちふまず着地を意識して走りましょう。すると、姿勢を保ち、かつ筋肉をリラックスした走りを身に付けることができます。

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