腕と肩の力を抜いて、スポーツでの筋力とスタミナを向上させる

 

あらゆるスポーツで運動技術を高めるためには「体の使い方」を学ぶ必要があります。姿勢の整え方、無駄な筋肉の抜き方、運動中の筋肉の働かせ方など、今まで運動していたときの筋肉の働かせ方を変えるのです。すると、今までより無駄な力みになく動作が行えるようになります。

ただ、多くの人は、体の使い方を学ぶといっても、「何から行えば良いのか?」と考えるかもしれません。世の中には、スポーツを教える指導者、体の機能に詳しい方など、「運動指導」を行う方は多くいます。しかし、どのような説明も抽象的で、「結局何を行なえば良いかわからない」と考える人が多いです。

ただ、武道の観点でお話すると、二つの体の部位の力みを取り去るだけで、あらゆる動作の運動技術向上のカギを使むことができます。それは、「肩と腕の力みを取る」ことです。

武道の世界では、剣や弓を取り扱うときに、肩が上がるように動作を行いません。この考え方をスポーツに取り入れることで、肩の筋肉の力みを取ることを可能とします。さらに、肩、腕の力みを取り去ることは、さまざまなスポーツ技術向上につながることもわかっています。

今回は、スポーツにおける「「肩、腕の力み」を取り去る具体的な手法について解説していきます。

両肩を落とし、両腕を楽にする

両肩を落とすことで、腕の力みを取り去ることができます。武道で行われる「肩を落とす」作業を行うためには、「姿勢」を変える必要があります。そのためには、「首の後ろを伸ばす」「少しお尻を締める」ことを行うようにします。

まず、首の後ろを伸ばします。人差し指を口元に当てて押せば頭部が後ろに引かれ、首の後ろが伸びやすくなります。これによって、頭部の位置が高くなり、連動して胸郭の位置が高くなります。

この姿勢の際に意識的に肩を落とした姿勢を取りましょう。すると、胸周りの筋肉が軽くつまめるほど、柔らかくなります(もし、肩の筋肉を落とす意識ができなければ、胸の筋肉が張りすぎてしまいます)。

胸郭の位置が高くなることで、下にある腹部の筋肉、背中の筋肉が上方に伸ばされます。これによって、背骨の無駄な湾曲がなくなるため、胸郭と頭部が上方に積み木のように立ちあがります。すると、肩関節周りの筋肉が頭部を支える負担がなくなります。これによって、肩の筋肉が楽になります。

さらに、肩を落とすと、腕の筋肉の力みが取れます。つまり、姿勢を変えることで、肩の筋肉がほぐれ、その結果として腕の筋肉が柔らかくなります。

肩を落とすと呼吸動作がしやすくなる

この、「肩が落ちた姿勢」を取ると、呼吸動作をしやすくできます。試しに、何も姿勢のことを考えずに上半身を脱力した姿勢で呼吸をします。

次に、首を伸ばし、肩を落とした姿勢で呼吸します。すると、肩を落とした姿勢の方が呼吸しやすいのがわかります。なぜなら、肩を落としたことによって、脇腹周りの筋肉が締り、呼吸中枢である「腋窩(えきか:脇回りを指す、呼吸動作に関係する)」がしっかり働くようになるからです。

呼吸動作を行う際、大切なのは脇下にある呼吸中枢神経が働き、肺がきちんとふくらむことです。深い呼吸を行うことで、酸素を取り込む量が増え、筋肉に多くの栄養分を送ることができます。これによって、全スポーツに必要な筋力、俊敏性、反応性、平衡性、筋持久力に必要な「酸素」を多く取り込むことができます。

多くのスポーツ選手が陥っている悩みは「酸素不足」です。普段の姿勢で、呼吸中枢に関係する脇回りの筋肉が活用できていないため、深く呼吸できていません。すると、必要な栄養源を取り込めていないため、スタミナが減ってしまいます。つまり、肩が緊張する原因と対策法を実践することで、スポーツパフォーマンス向上、怪我の改善につながっていきます。

実際に、私はセミナーでは、肩周りの筋肉をゆるめる手法、姿勢構築法、さらに、その状態をスポーツ動作で維持するコツをお伝えします。これらを実践することで、今までガチガチに力みやすかった方は「前より力みなく行えて、スポーツパフォーマンスが向上した」と報告をいただいています。

肩を落とすことで、呼吸動作がしやすくなり、心身の安静度が高まります。さらに、腕の力みをなくすことで、無駄な力みがなくなり、休んでいる筋肉が増えます。すると、次の動作に働く筋肉の数が増えるため、筋力を向上させることができます。これによって、スポーツパフォ-マンス向上につなげることができます。

胴体を動かすことで、肩や腕を動かす

では、肩の力みをとった場合、どのようにして腕を動かしていけば良いでしょうか?それは、腕や肩を動かすのではなく、「胴体」を動かすようにします。

人の胴体部の筋肉には、背骨周りについた「脊柱起立筋」、骨盤からろっ骨にかけてついている「腰方形筋」、腹部についてい「腹横筋」の三つがあります。これらの筋肉に無駄に力んだり、弛んだりしなければ、背骨を前後に反らしたり屈ませたりできます。この原理を使うと、スポーツ動作を今より少ない力で大きな力を発生させることができます。

例えば、あなたが左手首、右手首を二人の相手につかまれたとします。通常であれば、両手首をつかまれたら、手首を払うことができません。

しかし、手首をつかまれていることを忘れるくらいに、手首、肩の力を抜きます。次に、首を伸ばし、肩を落として、腹をへこませた状態から、胴体をひねってみてください。すると、力のぬけた手首が「背骨」を軸に、素早く引っ張られ、ぬんちゃくのように動きます。すると、つかんでいた相手はその腕の振られる力に圧倒されて、つかんでいた手首を払われてしまいます。

このように、腕の力を抜いて、背骨を中心に身体を動かすことを武道の世界では「中心から動く」といいます。腕や手首を腕や手首の筋肉で動かしてしまうと、動きがぎくしゃくしてしまったり、力みが入ってしまいます。すると、パワーや威力が出ません。

そこで、肩や腕の力みは最大限に取り去り、「背骨から動くように」意識して、腕を動かすようにします。この考え方を取り入れることで、さまざまなスポーツで技術向上につなげることができます。

バッティング、ピッチング動作に肩が落ちた姿勢は必須

さらに、肩回りの筋肉が力んでしまうとあらゆるフォームの崩れにつながります。野球選手の場合、脇回りの筋肉が張った「肩が上がった姿勢」が癖づくと、スイング動作で胸が開きやすくなります。

そこで、バッティングを行うときは、バットをブラブラ動かし、手首でタイミングを取るようにしてください。ピッチングでは、最大限にボールを握った手の力は抜くようにしてください。そうして、姿勢を整え、背骨を少しひねると、腕がしなるように動きます。

このようにしたい大きな理由は野球選手、ピッチャーは手首や脇を固めて動作を行うことが多くなったからです。

昔の野球選手の動作を見ると、バットをブラブラと動かす構えを取る方が多くいました。長嶋重雄選手や落合博光選手など、有名な選手を含め、多くの選手が構えの際にバットを動かします。その理由は、手首の力を抜くことで、スイングの軌道がキレイに、身体に無駄な力みなくスイングが行えるからです。同様の理屈がピッチング動作でも当てはまります。

試しに、バットを手首をブラブラにして柔らかい状態で振ってください。次に手首を固めてスイング動作をおこなってください。すると、手首を固めてスイングを行うと、力が入り、バットが振りずらいことがわかります。これは、手首を固めてしまうことで、力みのない、無駄のないスイング軌道が実現できなくなるからです。

野球に限らず、あらゆるスポーツにこの原理があてはまります。テニスやゴルフにおけるスイング動作であっても、バスケのシュートを打つ動作であっても、無駄に手首や肘の位置を固めることがあります。こうした意識はスポーツにおける「肩」や「腕」の力みにつながります。そのため、腕をなるべく力を抜いておくようにし、スポーツ動作を行うようにしてください。

マラソン選手は肩を落とした姿勢を維持することで、スタミナが向上する

さらに、私自身もマラソン、トライアスロンを経験しており、持久系のスポーツを教える際は、簡単な工夫でスタミナが向上できます。それは、「両肩を落とし、腕の力みをとるように」ランニングすることです。

ランニングの世界では、スピードや持久力を高めるために、「腕の振り方」を教わることがあります。「腕を振ることで、推進力が上がる」「肩甲骨を意識して腕を振る」といった説明があります。ただ、このような意識は走っている最中は捨てるようにしてください。実際に、ランニング中に腕を振ることを意識しただけでも、肩や腕に力みが入ります。

そこで、腕の振り方、腕の状態は全ておいといて、「肩、腕の力みを落とし続けること」だけを意識します。その際は、腕をダランと下しても良いし、手首も曲がっていても問題ありません。腕の力みを取り、肩を落とし続けながら走るようにしてください。これを意識し続けると、持久力やマラソンのタイム向上につながります。

実際に、私を含め、私が運動指導をしているクライアントはみな、この意識だけでスタミナ、タイム向上の報告をいただいています。つまり、武道における「肩、腕を落とすこと」は、スポーツ技術向上につながります。

以上の内容をまとめると、肩、腕を落とすことで、無駄な力みがなくなって呼吸動作が行いやすくなります。さらに、腕の力みがなくなることで、背骨をねじったり、屈んだりする動きがしやすくなり、かつ運動におけるパワーが向上します。

あなたが、スポーツの技術低下に困っているとき、運動中の怪我や疲れに困っている場合は、まずは「肩を落とし、腕の力みを取り去ることを意識してください。体を適切に使うことで、楽にパフォーマンス向上をしながら、スポーツが行えます。

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