武道の「股関節のとらえ」による、スポーツ技術を向上した実例

あらゆるスポーツ技術向上に共通することは、「姿勢を正す」ことです。動いている最中や静止している最中に姿勢の崩れは背骨や関節における「歪み」が生じています。もし、普段の姿勢がゆがんでいれば、その状態でプレーを続けることになります。

当然ですが、その状態では怪我につながる可能性があります。スポーツ経験者を見ると、体の仕組みに基づいて体を動かさず、筋力や感覚に頼ってスポーツをしてしまいます。もしも、無理な動作によってスポーツを続けてしまうと、怪我が多くなるため、フォーム改善を行なう必要があります。

そこで、武道の世界では、あらゆる武道で共通するフォームの4原則があります。スポーツ動作においても、すでに有効性がわかっています。ここでは、スポーツや運動動作を向上させる運動の四原則について解説していきます。
 

運動動作を行いやすくするフォームの原則

例えば、野球で遠くに飛ばしたいと思ったとき、身体から大きな力が出せる必要があります。あるいは、細かいテクニックを身につけるためには、正確な動作ができることが大切です。

このような、考え方は他のスポーツでも言えます。テニスやゴルフといった競技でも、同様の考え方ができます。または、陸上やサッカーのように走るスポーツでも、同様のことが言えます。そして、これらの運動を上達する秘訣は武道では知られています。
 
・股関節で地面を捉える

これを抑えることで、運動動作を向上させることができます。そして、自分の行っている運動に取り入れたい場合、さらに一つの内容を正確に理解する必要があります。「股関節を地面に捉える」動作について解説します。

股関節で地面を捉える

スポーツ動作を行うとき、最初の構えで腰が安定した立ち方をしていると、プラスに働きます。その理由は腰が安定することで、体幹部を使った動きをしやすくなるからです。しかし、多くのスポーツ選手は普段立った状態から足に力が入った姿勢が癖づいています。

実際に、何も考えないままで立つと誰かに押されてしまうとほとんどの人の姿勢が崩れます。そこで、上半身を下半身にしっかり乗せ、ふくらはぎや足に力がない姿勢を構築する必要があります。それが「股関節」で地面をとらえた姿勢です。

股関節で地面をとらえた姿勢とは、「股関節が足裏の真上の位置」にあることです。もう少し正確にお話すると、左足と右足踵を結んだ線、右足を左足踵を結んだ線を引くと、交わる点があります。これが、股関節で地面を捉える感覚になったときの上半身の重心の位置です。

もし、股関節が足裏の真上ではなく、少し前方に行ってしまうと、脚の後ろ側の筋肉が緊張します。すると、骨盤が前に傾いてしまい、背中の筋肉まで張ります。背筋が緊張すると、ランニングのようなただ前方に進むスポーツでは少し有利に働きます。しかし、腕を上げたり体をひねる動作をする際に大きく力みが入ります。

例えば、野球では、スイングはドアスイングになる、ピッチャーではボールを投げるときに腕に力みが入りやすくなります。ボクシングの場合では、素早いジャブが打てなくなってしまいます。短距離ではなく、長距離の選手であれば、背筋が緊張し続けると、太もも裏側の筋肉に負担がかかりすぎてしまい、太もも裏側が痛くなってしまいます。

もし、「股関節を地面でとらえる」動きをスポーツに応用する場合であれば、「軽く膝を曲げる」ようにしましょう。膝を軽く曲げることで、骨盤が垂直に立ちやすくなります。

 

股関節を地面でとらえるの本質

股関節を地面でとらえる際のポイントは骨盤の傾きにあります。人は骨盤の傾きによって、動きが大きく阻害されます。

まず、武道における姿勢の構築法は「首を伸ばし、肩を落とす」ことです。首を伸ばすことで、頭部、胸郭の位置が上方にあがります。これによって、腹部と背中の筋肉を無駄な力みやたるみなく、伸ばすことができます。

これによって、運動動作で使われる「背骨を左右に倒す」「背骨を屈める・反らせる」「背骨をひねる」の3動作が円滑に行うことができます。まず、武道の姿勢を構築し、「反る・屈む」「左右に傾ける」「ひねる」動作を行いやすくします。

実際に、頭部の位置が低い「アゴが上がった」姿勢と、首の後ろを引いた「頭部の高い」姿勢を構築して、三つの動きを行ってみましょう。すると、頭部の高い姿勢の方が、背骨を動かしやすいことがわかります。最初の姿勢で上半身の無駄な力みをなくしてしまえば、あらゆる動きがしやすいことがわかります。

実際に、スポーツにおけるしなやかな動き、速い動き、力強い動きは共通しています。首を伸ばして、肩を落とすことで上半身の前、後ろ側の筋肉を伸ばします。次に、各スポーツへの応用例について解説していきます。

野球の打つ、投げるに「股関節のとらえ」を応用

野球において、スイング動作、ピッチャーの投げる動作では、骨盤の角度の据え方が大切になります。

なぜなら、骨盤の角度が前に傾いていると上体が前に突っ込んでしまい、後ろに傾いていると頭部が後ろに傾くからです。実際のスイングやピッチング動作を行なえば、その傾向は顕著に表れます。

例えば、高校野球で問題とされているのが、ボールのインパクトの際に頭部が前に出すぎることです。頭部が前に出ると、ゴロや低い弾道の打球を打つのには適しています。しかし、縦方向の変化球が出てしまうと、頭部が前方に出る分、ボールが「消えた感覚」に陥ります。つまり、ストレートに対応できても、変化球に対応しずらくなります。

実際に、打率の高いバッターのフォームを見ると、フォームで骨盤を垂直に立てて、最大限に筋肉を休ませてインパクト動作に進めていきます。すると、腰が前や後ろに動きにくくなるため、バットが背骨を軸に適切に回転運動が行われます。

もしも、腰が前や後ろにずれてしまうと、回転運動が行われる際の背骨自体が不用意に動いてしまうため、回転における力が弱くなります。したがって、打球が強く飛びにくくなってしまいます。参考として、古くの野球選手である、落合選手、門田選手、野村勝也選手などがいます。体型が小さいけどホームランを多く量産したバッターを観察することが大切です。

ランニング、サッカーを「股関節のとらえ」を応用

サッカーでディフエンスを行う際に、瞬時に相手の動きを察知し、対応しなければいけません。その際に、股関節を垂直に立てておくと、左右前後の動きが行いやすくなります。

その理由として、骨盤を垂直に立てることで、脚の前側と後ろ側の筋肉に凝りがなくなるからです。

実際にサッカーを行っていれば、わかりますが、体重を前にかけていると最初の一歩は強く出ることができます。しかし、サッカーでは、左に動いたとしても、瞬時に右に体を動かす俊敏性を求められます。サッカーの練習でこれを「ミラー」といい。どのような状況であっても、左右前後に動くための力を求められます。

もし、骨盤が前に傾いた姿勢で「左」⇔「右」の動きを行ってみましょう。すると、最初の一歩でつま先に力がかかり、身体がねじれやすくなります。そのため、なるべくつま先に力を入らないように姿勢を保持します。

左に動きたい場合は左脚の力を抜いて背骨全体を左側にずらすように動かします。次に右に動きたい場合は、右脚の力を抜いて背骨全体を右側にずらすようにします。すると、右や左に動いた際に、上体のブレが軽減されます。このように、脚に力を入れず、軸を動かすように身体全体を動かすことで、次の動作を行いやすく身をこなすことができます。

実際に、私はサッカー含め、バレーやドッジボールなど、左右前後に動きを求められるスポーツにおいて、この動きを利用しています。学生だったころに比べて脚が疲れにくくなり、またパフォーマンスも大きく向上しました。さらに、サッカー選手やバレー選手にも同様の内容を解説したところ、以前よりスタミナが向上したと報告をいただいています。

ボクシングの動きを股関節のとらえを応用

最後にボクシングの動きにも応用できることもわかっています。通常、ボクシングで相手にジャブをかけるとき、腕や肩甲骨を使って動かします。すると、腕が疲れてきます。「素早くジャブを打ってください」と言われると、腕や肩甲骨に力がはいりやすくなります。

そこで、発想を転換します。首の後ろを伸ばし、両肩を落とします。すると、骨盤から肋骨下部(ろっこつかぶ)にかけてついている筋肉に重さが乗るようになります。すると、腕や肩の力みが少なくなります。そこから、腕を全く意識せず、「背中だけ意識して、腕を動かす」ようにします。すると、腕自体が放り投げられるように前方に飛びます。

この感覚を身につけることができれば、素早いジャブを力みなく打つことができます。実際に、私はボクシングの知識はありませんが、この姿勢と意識の仕方で、1秒間に打てる突きを腕に力みなく、格段に早まりました。

この動きは、空手から来ています。空手で突きを行う際も、腕や肩に力みを最大限にとって、まず身体の重心を腰周りの乗せることからはじまります。それによって、腕が力みがないまま、ジャブを打つときは腕がほうり投げられるように動きます。見る側には速く見えますが、実際打っている本人には、腕の力みがなく打つことができます。

このように、腕や肩の力みにとらわれず、まずは姿勢を整え股関節を足裏の真上に乗せるようにしてください。首の後ろを伸ばし、肩を落とすことで骨盤に余計な角度ができず、地面と垂直に立ちます。これによって、上半身の前、後ろ側の筋肉が上方に伸び、あらゆる動きがしやすくなります。

この姿勢によって、野球の「打つ、投げる」、サッカーの「左右に動く」、ボクシングのジャブを「打つ」動作の改善につながります。他のスポーツでも大きく技術を高めることができる考え方であるため、自身に取り入れるようにしてください。

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