一般人、スポーツ選手の動きを変える「丹田」の話

一般人の日常生活、スポーツ選手におけるパフォーマンス向上を実現させる情報として、武道の身体の使い方を取り入れることは大切です。そこで、弓道において、身体を効率よく活用するための考え方として「丹田」があります。

人間の体には「丹田」と説明される空間があり、弓道ではこの空間を重要視しています。今回は、一般人に役立つ丹田の話について解説していきます。

ここでは、スポーツ選手に知ってほしい丹田の話と丹田への体重の乗せ方を説明していきます。

 丹田とは?

丹田とはもともと中国の道教の言葉であります。「丹」は赤い仙薬、「田」は栽培する地という意味です。丹田は仙薬の畑、つまり健康の泉の意味となっています。

そして、丹田とは臍下8~9センチ下、体の表面から8~9センチ中程にあたる空間です。決してそういう器官があるわけではなく、そのあたりの空間のことを指します。

弓道の世界では、弓を引く際中に「丹田」の考え方を学び、実践に取り入れます。「立つとき」「弓を引くとき」「矢を放つとき」に、丹田を大切にして、体を動かしていきます。

通常、弓は持った後、上方向に上げて、左右の拳を下ろしながら引いていきます。一般人であれば、弓を引くときは、左右の拳の力で「手先」で弓を引こうとします。しかし、弓の達人の場合、弓を引くときに、手首や腕に力を入れません。

達人の場合、体幹部の筋肉を活用し、姿勢をブラさないようにすると、腕や手首にそこまで力を入れなくても、弓を大きく開くことができるのです。この状態を、昔の弓道家は腕や手先といった筋力ではなく、別の力を働かせた結果と解釈して、「丹田から発生するエネルギーによって弓を引く」と解説しています。

引き分けの運行となるや、丹田(下腹)に緊張を加えながら静かに息を吐きつつ会(かい)に至らしむるのである~大射道教派 安沢範士~ (弓道教本より引用)

’引き分けは「弓を引く動作」のこと、会は「弓を引き切った状態」のこと)

「姿勢の崩れ」によって丹田の力は出なくなる

もし、実際に弓を引くときに両腕の力を使って弓を引いたらどうなるでしよう。想像するとわかりますが、的に向かって顔を向けているとすると、弓を持つ左手と弦(弓を張るためのひも)を持つ右手を比べると、弦と持つ右手はあなたの視界に入りません。したがって、弓を引くときは

そのため、左右の力に差が生じてしまい、どちらか片方の腕に力がかかったとします。すると、両肩関節が地面に対して平行にそろわなくなるため、上半身の姿勢が崩れてしまいます。結果として、「丹田の力」が発生しなくなります。

これは、簡単な実験でわかることです。例えば、誰かを押すときに、肩を上げて押してみましょう。次に、腕の力を抜いて、肩を落とした状態で押してみましょう。すると、肩を上げた押した方が人を押しづらく、力が伝わらないのがわかります。

人は、姿勢が真っすぐになっている状態と、そうでない状態では体を動かしたり、道具を使ったりするのが余計な力みなく行えます。なぜなら、姿勢が真っすぐに正された状態では、背筋と頸筋の筋肉が伸び、上半身の力みがとれるからです。

そして、日常生活の動作を含め、運動動作の起点は全て「腰」から来ています。腕を動かすとき、脚を上げるときに、体をひねるとき、全ての動作は腰の働きが加わり、連動して手足が動きます。

つまり、上半身の力みがとれた姿勢を構築すれば、体を動かすときに「腰以外」の筋肉を必要以上に使わなくてすみます。加えて、何か動作を起こすときは、腰を起点に動作が行われるため、結果的に「腰から動作している」ことにつながります。これが、「丹田」の重要な考え方です。

他の武道でも有効とされる丹田の重要性

なお、この丹田の重要性は、他の武道関係者でも知られています。

武道の世界では、動作中での丹田の心持ちを大切にします。パンチを繰り出すときは「丹田から発するように」と話す空手家がいます。あるいは弓道においては、「手先で引くのではなく、丹田から発せられるエネルギーによって弓を押し開く」と説明している人がいます。

武道の世界における「腹」の心持ちや使い方を理解すると、あらゆるスポーツにおけるスピードや力が向上します。今まで、怪我や体の不調で悩まされていた人であれば、全身の無駄な力みをほぐすことができます。

だからといって、下腹を力ませることではない
丹田の重要性はメディアが発達し、「丹田」という言葉はよく知られるようになりました。武道の世界では、「下腹に力込めて」とか「丹田に力込めて」という風に説明して、丹田を意識させる人がいます。しかし、実際はそうして無理やり力を入れることではありません。

なぜなら、腹に力を入れたり圧迫させたりすると、上半身全体が力み、姿勢が崩れてしまうからです。(具体的にはおしりが出て、胸が前にでる出尻鳩胸の姿勢になりやすい)。字だけを理解するとそうですが、丹田に力をこめるとは決して力んだりしません。

丹田に力を込めるとは、下腹に自分で力を入れることではなく、「上半身の体重を丹田辺りに乗せる」ということです。つまり、上半身の力みをすべて抜き去って、その重さを腰の中央辺りに乗るように立つのです。

例えば、自分の胸を前に出すと、胸が張った感じになります。これは自分の首の重さが胸に乗っている状態です。首を曲げると、うなじが重く感じます。これは項に自分の頭の体重が乗っていることになります。

これを、首を上にどこまでも伸ばし、胸をなるべく控えて、肩を落とすと、おへそより、ちょっと体の中くらいが体重がのった感じになります。

坐っている状態だと、骨盤の一番下の部分である「坐骨」に自然と体重が乗り、立っている状態だとつちふまずの前縁あたり全体に体重がのるようになります。この状態が丹田に体重を乗せる、力を入っている状態です。

 丹田にしっかり体重を乗せる方法

初めはわからなくてもよくて、稽古してだんだん慣れていくうちにこの感覚がわかってきます。自分の頭の頂点である百重を10センチ上に伸ばす気持ちで顎を引いて、うなじを伸ばし、肩を落とします。そうすると自然と足の裏全体に体重が乗るようになります。

この姿勢であらゆるスポーツの動作を行うようにしましょう。すると、姿勢が乱れにくくなり、無駄な力みがなくなります。その結果として、スムーズな動きや体の不調改善につながります。

「丹田」を強化できるのか?

個人指導やセミナーにおける質問で「丹田」を強化する方法は?と聞かれることがあります。一般人やスポーツ選手は、武道に触れることがないために、丹田は筋肉のように強化できるものと考えます。

ただ、丹田を強化するのは、「筋トレ」によって強化するわけではありません。丹田とは、先ほど申し上げた通り「下腹付近の空間」を指しているのであり、筋肉があるわけではありません。つまり、丹田は筋トレやトレーニングによって強化するのではなく、「下腹をよく意識できるように強化する」という風に考えるのが正しいです。

例えば、丹田付近を自分でも意識しやすくする方法として、「グンバイ」という呼吸があります。これは、息を吸った状態で横隔膜を上下に動かす体操です。

まず、軽く背中を伸ばして息を吸います。息を吸ったら、そのまま吐かないで止めるようにします。次に、その状態でおなかをへっこましたりふくらましたりしてください。すると、腹部周りに取り込んだ空気を送りこむことができます。

あるいは、息を吸って止めた後に、胸を張ったりすぼめたりしてください。慣れてきたら胸を張ったときに骨盤を前に傾け、胸をすぼめたときに骨盤を後ろに傾けるようにしてください。すると、取り込んだ息を「胸→お腹」といった部位に移すことができます。

このように、腹部に意識的に「腹圧」をかけることで、普段から丹田を意識しやすくなります。これが結果的に「丹田を強化した状態」になります。

なお、決して下腹付近の筋肉に力を入れないようにしてください。腹部の筋肉に力をかけると、体全体が動きにくくなります。丹田を強化することは、「意識しやすい状態」にすることであって、「力をかける」ところではないと意識してください。

丹田を意識すると、健康になれるのか?

丹田を意識すると、健康になれるという情報や考え方があります。実際に、ある書籍では、「丹田を意識した呼吸をすると、慢性病、生活習慣病が改善される」といった報告も出ています。

この根拠は存在します。下腹は人体の中で最も血液の循環量が多い場所であり、「腹圧」をかけることで、下腹周りの血液の循環を強く促します。それによって、全身の細胞に酸素と栄養がいきわたりやすくなり、結果として痛みや不快感といった症状が改善されます。

現代人の生活は、座り作業が中心となっているため、下半身から上半身に血液を送る機会が少なくなりがちです。さらに、運動不足によって、下半身から上半身に送る力が弱っています。そこで、丹田を意識し、腹圧をかけることです。滞った血流が改善されて、

丹田呼吸法を勉強し、より丹田を意識できるようにする

丹田を意識しやすくする方法の一つとして、「丹田呼吸法」が挙げられます。姿勢を整え、下腹に空気を取り込みやすい状態を作ることで、丹田を意識しやすくなります。

まず、軽くあごを引いて、両肩を落とします。この状態で、息を5秒間吸って、10秒吐いてください。この動作はゆっくりと落ち着いて行うようにしましょう。「5秒吸って10秒吐く」動作を2~3分続けます。すると、身体にあらゆる影響が出てきます。

・気持ちが落ち着いてくる

・上半身の力みが取れてくる

・体が温かくなってくる

・気持ちが明るくなっていく

・身体の痛みや不快感が少なくなってくる

このように、丹田呼吸法を意識することで、丹田を意識しやすくなり、「丹田の強化」につながります。日常生活に「丹田」を意識づけるのに「呼吸」は大切です。実践してみるようにしてください。

なお、丹田の内容を深く知りたい、普段の生活で取り入れるようになりたいと思ったら、当健康所主催の「RKYメソッドのセミナー」にて、様々な実践法、体操法、身体使いを
行っています。一般人、スポーツ関係者でさらに健康度、パフォーマンスを高めたい方は、ぜひお越しください。

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