弓道での「未来身」から、スポーツ時での精神の整方を理解する
スポーツの世界では、何が起こるかわからない場面があります。試合で味方チームが有利になったりその逆になったりします。
そのため、試合に展開があったときに人は心が揺れてしまいます。そのため、どんな状況になっても心を制御することは大切です。そこで、弓道の世界で知られる考え方を理解すれば、たとえ試合の流れが変わったときでも自分の心を平静に保つことができます。
ここでは弓道の世界で用いられる、スポーツの世界で精神を安定させるための考え方を紹介していきます。
弓の世界で矢を放つ瞬間(未来身)での考え方を理解する
弓道の世界では、「過去身」「現在身」「未来身」という言葉があります。これは、弓を引く準備から矢を放つ間までの体の状態を分けたものです。動作を分けると以下のようになります。
弓を引く準備をする →弓を体の前方に高く上げる →弓を引いていく →矢を放つ
この中で、「弓を引く準備をする」段階を過去身といいます。「弓を体の前方に高く上げる」「弓を引いていく」段階を現在身、「矢を放つ」段階を未来身と呼びます。
実は、「矢を放つ」動作には技術や方法がありません。それよりも、心の乱れの方が重要視されます。日本の弓はアーチェーリーと違い、上が長くて下が短いです。そのため、人の気持ちが少しでも揺れたときに上部が揺れ、的から外れてしまいます。
つまり、矢を放つ瞬間は最も人の神経や精神の揺れが影響します。そのため、昔に書かれた弓道の本では矢を放つ方法をあらゆるものにたとえています。例えば、「無心な気持ちで放つのが理想である」や「心七分、技三分」と説かれています。
昔の弓道家は、矢を放つ動作を「未来身」と称しました。そこで、弓道家は「未来身」の動作においては「理想を捨てて無駄なことを考えない」ことに徹します。
いくら自然や無心な気持ちで矢を放つのが理想といっても、そう簡単にできるものではありません。むしろ、そういった抽象的な言葉にとらわれて心が揺れてしまったら、狙いがぶれてしまいます。
そのため、矢が離れる瞬間がスムーズにおこなわれるように努力するしかないと考えます。拳の動く軌道や押す方向を理解して、それだけ行うことに徹底するのです。
このように、結果がどうなるかわからない「未来身」では、理想や意識を捨ててひたすら弓を適切な方向に押すことに意識を注ぎます。
スポーツにおいて不確実なことは考えないようにする
この「未来身」の考え方は、すべてのスポーツにおいても同様です。スポーツには理屈を超えて、なかなか言葉では表現できないタイミングが存在します。
例えば、「ゴルフのパターパット」「野球のフォロースルー」「サッカーのフリーキック」「陸上のスタート」などです。これら一瞬の動作には理想的な形があります。しかし、それを実現させるための方法はありません。
また、これらのタイミングで思い通りの動きはそう簡単にできるものではありません。しかし、多くのスポーツ選手が先ほどのような「瞬間」に余計なことを考えてしまい、試合が終わった後に後悔や反省の気持ちを持ちます。
そのため、「こういった瞬間に理想を追い求めることは無駄」と考えるようにしましょう。結果がわからない「未来身」には、技も方法も存在しないからです。唯一、スムーズにその動作をしようと思うことはできるので、自分のやることに心を任せることに徹しましょう。
試合の流れを決める局面では、あなただけでなく相手も同じように精神が揺れています。そのため、「起こった出来事に対して、いかに余計な気持ちを残さず動けるか」が大切です。
例えば、野球の世界で自分の渾身のストレートを打たれたとします。それでも膝をついてうなだれず、次のバッターに対しても同じ気持ちで直球勝負を挑みましょう。ゴルフにおいても、自分の思い通りに振りぬいてカップインしなくても次にできることを考えます。
そうして、状況が変わっても現状をしっかり受け止め、自分の動きに徹することができる人がチャンスをものにすることができます。
スポーツにおいては、不確実な瞬間が必ず存在します。そうしたときは弓道の「未来身」と同じようにとらえて、無駄なことを考えずに動きましょう。その意識の積み重ねにより、大事な場面でも心を平静に保つことができ、相手に打ち勝つことができるはずです。
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