本に載っている「言葉」にとらわれるとスポーツ動作が悪くなる

スポーツ選手が実力を上げるために、あらゆる本を勉強することは大切です。

 

例えば、本を眺めると普段使わないような「特別な言葉」がたくさん載っています。「股関節」「肩甲骨」「インナーマッスル」といった言葉は、最近のスポーツ理論書にたくさん使われるようになりました。

 

しかし、こうした言葉にとらわれると、かえって動きが悪くなってしまうことも少なくありません。とくに勤勉な人ほど、この言葉にとらわれたスポーツの動きをしてしまいます。

 

武道の世界では、自分自身の関節、筋肉を最大限に活用することを目的に動作を行います。しかし、言葉にとらわれてしまうと、あなた本来のスムーズな動き、理想な動きができなくなり、かえってスポーツ技術が低下する可能性があります。

 

そこで、今回は言葉にとらわれることで起こるスポーツ動作の悪い影響と、言葉の正しい受け取り方について解説していきます。まずは、動画を確認し、言葉による人体に与える影響について理解してみましょう。

 

 

 

動きがよくなるために必要な脳と記憶の仕組みを理解する

スポーツにおける、打つ、走る、投げる、といった体の動きは、数々の神経と筋肉が同時に活動して行われます。活動する筋肉は神経を介して、脳から送られる情報によって、動きます。脳から、「右腕の筋肉よ、収縮しなさい」という情報が電気信号として神経に伝わり、背骨回りにある脊髄を通り、筋肉についた感覚神経に流れていきます。

 

このように、スポーツにおいて運動を統括しているのは後頭部付近、首の付け根にある脳幹です。脳幹は、心拍数、血圧の調整、全身への栄養分の供給など、運動において重要な機能を担っています。さらに、スポーツ動作における姿勢やフォームでは、太ももの付け根、背骨周りにある「抗重力筋」が関係しています。

 

脳幹部の神経が働くことで、抗重力筋が活性化し、スポーツにおける姿勢が崩れず、安定的に動作が行えます。スポーツ動作において、無駄な力みなく、自分の関節を最大限に動かすためには、脳幹部を活用できるようにする必要があります。脳幹は、普段の生活での身体の状態、スポーツにおける運動機能、あらゆる場面に関係します。そして、運動技術を高めるために必要な部位であるといえます。

 

言葉にとらわれず、体を動かす意識に重きを置く

そして、武道の世界では、脳幹部を活用し、最終的に脳によって体の動きが阻害されないように動きを覚えていきます。

 

まず、運動動作を覚える際に、人から言葉で説明されることで、「頭」で理解して、覚えます。この際に働くのは脳の前側にある「大脳皮質」です。動きを覚える際に、「足を上げて」「肩甲骨を意識して」といった説明を受け、「足」や「肩甲骨」を意識しながら動きを覚えていきます。しかし、その動きに慣れてくると、「足」や「肩甲骨」といった部位を意識せずとも、動きができるようになります。

 

その次に、余計な言葉や意識を置かず、自分の体の動き自体に重きを置くようにします。例えば、呼吸を行うときは「腹から吸ってー」と意識しません。それより、背筋、首筋をまっすぐに伸ばして、呼吸によって上がり下がりしている「横隔膜の動き」を意識します

 

野球などのスイング動作の際は、バットをスイングするときに「下半身に体重を置いて」「腰をひねる」といったことを意識をやめます。それより、腕の力を抜き、背筋、首筋をまっすぐに伸ばして、スイングしているときに使われる筋肉(腰回りの筋肉や太ももの付け根の筋肉など)が伸ばされる感覚を意識します。つまり、頭で考えながら動作を行って意識ではなく、自分の動いている筋肉や関節の動きにだけ注目するのです。

 

すると、呼吸をするときは、言葉や知識を意識しながら呼吸をしたときより多くの空気を出し入れできるのがわかります。野球のスイングであれば、頭の中で考えていたときより無駄な力みなく、バットを速く振ることができます。これは、言葉によって、「脳の前側」を活用しながら動作を行うのではなく、自分の動きに意識を置いて脳の前側の過剰な活動を抑え、脳の後ろ側を使って動作しているからです。

 

一流の選手の場合、運動動作一つをとっても体の仕組みに基づいて動作を行います。合理的な動作を一度身に着けたら、余計な意識を省いて運動動作に取り組みます。これによって、大脳皮質によって考えながら動作をしていた習慣がなくなり、脳の後ろ側にある小脳や脳幹部が活動しながら動作する習慣に切り替わります。

 

言葉にとらわれると、スポーツ技術が下がる理由

そのため、スポーツにおいて、やたら口であれこれというより、素直に本人の感覚や感性に任せて運動を行った方が、運動技術が向上します。なぜなら、言葉によって運動を理解しようとすると、言語脳を司る大脳皮質が活動してしまうからです。

 

後頭部付近にある「脳幹」が活動することで、脳全体の機能を調節するセロトニン神経が分泌されます。セロトニンが脳幹から流れることで言語や視覚に関わる脳神経の過度な活動が抑制されます。これによって、言葉や情報による、感情の起伏や血圧の変化が抑えられます。その結果、全身の筋肉を効率よく、無駄な力みなく動作を行うことができます。

 

脳幹が働くことで、脳全体の活動のバランスが整い、身体全体を素直に動かすことができます。しかし、大脳皮質の活動が過剰になりすぎると、脳全体、感情の起伏を調節する物質の分泌量が低下します。すると、思う以上に体を動かせなくなり、運動技術が低下します。

 

しかし、頭や言葉で考えながら動作を行うと、大脳皮質に栄養や電気的刺激がいきすぎてしまいます。すると、脳幹の活動が抑制されてしまい、身体全体ではなく、一部分の筋肉や活動しか動かせなくなります。

 

「肩胛骨を意識してください」といわれて肩胛骨を動かせば、肩胛骨周りの筋肉は動きます。しかし、それ以外の体の部位が意識できなくなり、「姿勢の崩れ」「無駄な筋肉の力み」などを煩います。同様に、股関節を意識すると、股関節以外の部位がおろそかになります。

 

インナーマッスルなど胴体部の筋肉を意識すると、頸椎などの上部の関節の意識が手薄になります。つまり、言葉や情報にとらわれて体を動かそうとすると身体全体を動かす効率が低下してしまいます。これは、大脳皮質を活動させて、筋肉を動かそうとした結果として起こります。                                                                                                      
もし、ものをとる、腕をあげるといった簡単な動作であれば、大脳皮質を活性化し、一部分の筋肉を確実に使うのがよいかもしれません。しかし、スポーツにおける運動動作の大半は脳幹が大きく関わる全身運動です。そのため、運動技術を高めるのであれば、言葉や情報にとらわれないように運動動作を行うようにしましょう。

 

特別な言葉を使うと、かえって運動技術を低下させる

そのため、あなたが運動しようとするとき、運動動作を考えるときに、むやみに言葉にとらわれないようにしましょう。スポーツの世界は指導者によっていうことが異なります。そのような言葉を一つ一つとっていたらいつまでも身体全体の筋肉を自分の思うままに活用できません。

 

そして、スポーツの世界では、感覚的な特別な言葉が多く存在します。これは、武道の世界でも同様に多く存在します。このような言葉にとらわれて、体を動かそうとすると、全身の筋肉を最大限に活用できず、運動技術が低下します。

 

武道における特別な言葉の一例
例えば、弓道の世界では弓を目いっぱい引き込んだ状態を「会(かい)」と呼びます。弓道の教科書を見ると、「会(かい)」には重要な要素が二つ書かれています。

 

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会において重要なのは「詰め合い」と「伸び合い」である。「詰め合い」とは身体の縦横十文字の基準をしっかり守り、「伸び合い」とはさらに引き込むのではなく「気力の充実」である。

 

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このように書かれています。弓道で高段者や教士と言われる人は堂々と「会における伸び合いが足りない」と当たり前のようにこの言葉を使います。

 

しかし、「詰め合い」「伸び合い」という言葉は具体的に何を指しているのかはわかりません。引いている姿勢でどこの部分に「詰め」があり「伸び」があるのか、あるいは「詰め」と「伸び」のどちらが先かということはわかりません。

 

そして、言われた人たちは自分の中で「伸びている気持ち」を作ろうとします。すると、胸を張ったり、肩関節がはずれるくらい肘を動かしたりします。すると、関節や筋肉に無理な負担をかけてしまい、最悪の場合には怪我を招きます。このようにすることで、どこかしらの筋肉が「伸びる」感覚があるのでしょう。しかし、特別な言葉にとらわれて、自分から必要以上に身体の関節を動かそうとすると、姿勢が崩れ、的に当たらなくなります。

 

これは、野球、テニス、サッカーなどの世界でも同じです。ここまでひどくないにしても、「肩甲骨」や「股関節」といった言葉で打つ・投げるの動作を説明するとします。しかし、具体的にどのように意識すれば肩甲骨が動くのかの「筋肉の働かせ方」「意識の仕方」は教えてくれません。

 

肩胛骨や股関節は、背骨周りにあり、背中側にある骨です。人間は身体を意識する際、身体の前側より後ろ側の筋肉や関節の方が意識しにくいです。そのため、いきなり「肩胛骨を動かしましょう」「股関節を動かしましょう」と指導されたとしても、理解するのは難しいです。むしろ、特別なことの意味や真意を求めようとして、考え込んでしまうと、さらに大脳皮質への刺激が高まります。すると、身体の動きを統括する脳幹の活動はさらに抑制されます。

 

このように、特別な言葉を意識すると、かえってスポーツ動作が悪くなります。人は言葉による影響力が大きく、身体全体に及びます。特別な言葉や内容について、わかった気になって実行することはかえってフォームや動きを悪くします。

 

自分で「する」のと、結果的に「なる」の違いを理解する

あなたが、行っているスポーツの技術をさらに高めていくためには、言葉の意味を正しく理解する必要があります。特別な言葉や知識は脳の前側の大脳皮質へ刺激が多くなり、全身運動に関わる脳幹を最大限活用できなくなります。

 

では、今後スポーツにおける特別な言葉はどのように受け止めればよいのでしょうか。それは特別な言葉は、運動動作中に、自分自身で行うものではなく、結果的に「なる」ものと理解することです。

 

さきほどの「詰め合い」「伸び合い」にしても、自分で意識的にするのではなく適切に引けば結果的に「なる」と考えると筋が通ります。肩甲骨や股関節の動きもきちんとした動作に従えば、結果的に「なる」と解釈した方が良いです。

 

「弓を引き込む瞬間」「ピッチャーのリリースの瞬間」「シュートを決めるインフロントキックの瞬間」というのは一瞬の動作であり、一番大事な場面です。そのときは自分の気持ちに忠実に徹し、スポーツの動作に全力を注ぐことが重要です。

 

そのときに、肩甲骨や股関節など一部分だけを意識して動かすことはかえってフォーム全体を悪くします。これは、言葉を受けて意識的に自分で「する」と思うと悪い結果になります。

 

たとえば、肩胛骨周りの筋肉を効果的に動かす手法として「スワイショウ」があります。背筋、首筋を伸ばして、腕を楽に前後にぶらぶらさせます。このときに、腕は動きに任せて、力を抜き続けるようにします。すると、どんどん腕の力みがとれていき、肩胛骨周りの筋肉が動くようになります。

 

腕や脚といった末端部の筋肉がゆるむことで、ようやく肩胛骨や股関節周りの筋肉が動くようになります。もし、ここで、頭で肩胛骨、股関節といった部位を意識しようとすると、その刺激が脳の前側にかかり、腕や脚に作用します。

 

単に意識するだけでは、体を動かすときに必要な筋肉は働きません。そこで、言葉のとらわれをなくした動きに徹する方が望ましいです。

 

指導者に悪い部分を指摘されると、必死にその部分を直そうと思って動作をします。ただ、「違う、できていない」と言われて、開き直って動作をしたら「そうだ、それでいいんだ」と言われることがあります。これは開き直ったことで言葉にとらわれた動きがなくなったからです。

 

言葉通りに意識して動作を行おうとしていはいけません。そうして、自分で「する」意識をなくせば、スポーツの動作を正常に行うことができます。

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