太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えすぎると、走る動作が遅くなる
スポーツでパフォーマンスを向上させるために、筋トレを行うことは大切です。そのためには、「走る」「跳ぶ」といった動作で主要となる筋肉を鍛えることがセオリーになっています。
走る動作を強化する筋肉として、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が挙げられます。この筋肉は胸の筋肉と同様に体の中で大きな筋肉なため、トレーニングの対象となることが多いです。
ただ、太ももの前側の筋肉の本質的な意味を知らないと、かえって走る動作のパフォーマンス低下につながる恐れがあります。ここでは、筋トレでパフォーマンスアップのために注意しておきたい大腿四頭筋の話について解説していきます。
太もも前側の筋肉を鍛えすぎると、走る動作でブレーキがかかりやすくなる
大腿四頭筋のトレーニングでよく知られているのが「ランジ」と呼ばれる動作です。両足をそろえて立ち、片方の足を大きく前へと踏み出して体を沈み込ませる動作です。左右にダンベルを持って行うと、下半身強化に役立ちます。
他には「腿上げ(ももあげ)」があります。膝の角度が90度になるくらい膝を左右に上げる動作です。これらの動作によって、太ももの前側の筋肉を鍛えることができます。
ただ、大腿四頭筋を強化して本当にランニング動作が強化されるかというと、実際はそうではありません。ひどい場合は走るスピードが低下したり、怪我しやすくなったりします。
その理由は、太ももの前側の筋肉を使うと、走る動作にブレーキがかかるからです。
試しにその場で立って、足裏のつま先・かかとに力をかけてみましょう。つま先に力をかけると、体は後ろに倒れやすくなります。これはブレーキをかける動作です。次にかかとを踏んでみると、体は前に倒れやすくなります。これはスピードをかける動作です。
つま先に力をかけたときに太ももの前側を触ってみましょう。すると、筋肉が固くなっていることがわかります。つまり、大腿四頭筋は体にブレーキをかけるときに働く筋肉です。
もし、走る動作を行っているときにこの筋肉が働くと、前に進みながらブレーキをかけるように進むため、効率が悪いです。スピードも落ち、体に負担がかかるために怪我する可能性もあります。
そのため、走る動作で大腿四頭筋は少なくても問題ありません。世界のトップランナーであるハイネゲブラシエやスプリンターであるウサインボルトを見ても、太ももの前側の筋肉はすらっとしています。
100Mでアジア選手の中で最高タイムを記録した伊東選手も、太ももの前側の筋肉を使った走り方をやめてからアジア記録を残しました。もし、走る動作でパフォーマンスをアップさせたいのであれば、大腿四頭筋はあまり必要のない筋肉と言えます。
太ももを上げないほうが、速く走れる
そのため、走る動作では、大腿四頭筋の活用を最小限に抑えた方が速く走れます。
ここでポイントとなるのが、走るときの太ももの上がり具合です。速く走ろうとすればするほど、太ももが上がりやすくなります。そうすると大腿四頭筋が働き、走るスピードが低下してしまいます。
そのため、楽に速く走りたい場合は、あまり太ももを上げないようにしましょう。太ももを上げずに、上体から前に出すように走ります。すると、楽に速く走ることができます。動作中の脚の負担も軽くなります。
陸上の世界で、海外のコーチは選手に走り方を指導するときに「太ももが走っている最中に上がってきたら、下げるようにしなさい」と指導します。これは、なるべく太ももの前側の筋肉を使わないように走ることを表しています。
多くの人は脚を前に大きく振り出そうとして、太ももをあげようとします。しかし、必要以上に太ももを上げて走ると姿勢も崩れやすくなり、体の使い方としては良くありません。走る動作では、脚ではなく上半身全体を前に出すことが大切です。
太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えすぎると、走る動作にブレーキがかかりやすくなります。速く楽に走るためには、大腿四頭筋を必要以上に使わないように意識しましょう。
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