スポーツでの心構えを変える:弓道の「礼」の考え方

スポーツ選手が練習する意味は体を鍛えるだけではありません。目標を通じて、さまざまな経験をして、精神や心の持ち方や考えを身につけるという目的もあります。

 

多くの人はスポーツで「勝ち負けの結果」を気にします。しかし、勝ち負けにこだわっていると、よけいな心配や力みが出てしまい、心は動揺してしまいます。すると、精神力を鍛えられなくなります。

 

ここでは、弓道の世界での「礼」の考え方から、試合でも実行できる心の持ち方について解説していきます。
 
 入場、退場で礼をする意味
弓道では、入場口を左足から入ります。射場に入ったら、入場口から入って右側に「神棚(かみだな)」があります。そこに体を向けて「礼」をして、自分の的前に立って弓を引きます。

 

引き終わったら退場しますが、帰り際にも神棚に体を向けて「礼」をします。このとき、礼をするときに心で考えることがあります。

 

入場するときは「これから演武させていただきます」と思って礼をします。帰るときは「演武させていただきました、ありがとうございます」と思って礼をします。このように、礼をするときに「感謝」の気持ちを込めます。

 

弓道の世界でも順位を争うときはあります。しかし、弓道では相手にフェイントをかけたり嫌な部分を責めたりすることができません。自分の実力で的に当てた人が勝利をつかむことができます。終わった後もお互いに敬意を持って、「ありがとう」の心で退場していきます。

 

スポーツの世界でも同様に、自分の出番がきたときは初めに「これからスポーツをさせていただきます」と礼をする気持ちで動作を行いましょう。始めや終わりのときに礼を取り入れてみるのもよいでしょう。
 
相手に対する思いや考え方が変わり、スポーツに対する心の持ち方が変わっていきます。

 

あなたの出番というときに自分のことばかり考えていてはよけい緊張してしまいます。そのような精神状態で相手のことを思いやることはできません。そのような考えでは、スポーツを通じて精神性や人格を育むことは難しいでしょう。

 

そこで自分のことを一歩引くように「礼」の気持ちを持てば、心も自然と落ち着きます。自分のことを客観視することができ、相手のことも視野に入ります。これによって、スポーツに対して感謝や暖かい気持ちを持てるようになってきます。

 

ヤンキースで活躍した松井秀喜選手は、バッターボックスに立つ前に必ず主審に頭を下げて「よろしくお願いします」と言ってから打席に入ります。主審のことを悪く見ることの多い野球の世界では特異な光景であるものの、このような精神をもっていたからこそ選手として活躍したのです。

 

スポーツでは、試合で勝つことは大切です。しかし、自分のことばかり考えて相手を気を遣わない戦い方をしていては、精神力は身につきません。相手や周りに目を向けることで、「勝つ」以外に大切なことに気づくことができます。

 

スポーツの動作を行うときは、初めと終わりに「礼」の気持ちを持ってみましょう。そうすれば、日常生活の中でさえも相手のことを考えながら行動できるようになってきます。

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